ライフプランコラム「いま、できる、こと」vol.315(2024年7月19日)「今日よりも明日が良くなる」と思える、公的年金の財政検証

2024年7月3日、厚生労働省より5年に1度の公的年金の財政検証結果※1が公表されました。一言で言えば、とても良い内容でした。そのポイントを3つ、お伝えしましょう。

(1)2024年度所得代替率61.2%は5年前の想定以上

  • 5年前と比べ、現役世代の平均手取り収入に対する年金額の割合、「所得代替率」という指標が改善
  • 5年前、6つのケースで想定していた2024年度の所得代替率は60.0%~60.9%、言わば、一番バラ色のシナリオよりも改善した、ということ
  • 改善した理由、1つは女性と高齢者の労働参加が進んだこと、もう1つが積立金の運用が好調だったこと

(2)5年後の次回検証時の所得代替率も50%以上

  • 今回の財政検証では「高成長実現」、「成長型経済移行・継続」、「過去30年投影」、そして「1人当たりゼロ成長」の4つのケースで将来の見通しを作成
  • 実質経済成長率の前提は、前回が▲0.5%~0.9%、今回は▲0.7%~1.6%とより幅広に検証
  • 4つのケースが全て、5年後の所得代替率は50%以上を確保(59.4%~60.3%)

(1)と(2)をあわせて考えると、足元の財政状況は改善し、より幅広な前提を置いても、5年後の給付水準は所得代替率50%以上※2を見通せるので、公的年金の制度としての安定性は5年前よりも高まったと言えるでしょう。

(3)「今日よりも明日が良くなる」と思える平均年金額

  • (1)と(2)の「所得代替率」とは、いわゆるモデル世帯、専業主婦世帯で男性が40年間働くことが前提
  • 今や多様性の時代、モデル世帯は他人事の人も多数
  • 今回新たに、男性と女性に分け、今50歳、40歳、30歳の人が65歳で受け取る平均年金額を試算

成長型経済移行・継続ケースの平均年金額(1人分)※1

成長型経済移行・継続ケースの平均年金額(1人分)※1

審議会では、「成長型経済移行・継続」ケースは目指すべき姿だと説明がありましたが、年金額が若い人ほど増える見通しだからこそ、目指せるというものではないでしょうか。そして、「今日よりも明日が良くなる」と思えれば、今の若い人も結婚や子育てに前向きになり、今回の財政検証でも前提が甘いと指摘されそうな出生率も改善に向かう、そんな好循環も期待したいですね。ご参考まで。

  • ※1 出所:厚生労働省HP「将来の公的年金の財政見通し(財政検証)
  • ※2 次の財政検証までに所得代替率が50%を下回ると見込まれる場合には、給付水準調整の終了その他の措置を講ずるとともに、給付及び負担の在り方について検討を行い、所要の措置を講ずるとされています

大和証券
2024/7/5作成

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